たいせつなひとを、おもいだすとき

GHいずみの はりあい


ミユキさんは、縫い上がった「ねこ」の横にちょこんと座り、話を始めました。

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「ねこ」というのは、長野県南木曽町の伝統的なちゃんちゃんこのような防寒具のことです。「ねこ」は普通のちゃんちゃんこと違い、作業がしやすいように、袖と前身頃がなく、背中をあたためるようにできています。

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あのハタの時は、吉田さんのために頑張ったのよ。吉田さんの顔をつぶしちゃいけないって。」

話し始めたのは、2015年夏の小屋フェスのガーランドづくり(ミユキさんたちはガーランドのことを「ハタ」って呼んでいます。)のこと。
小屋フェスの企画運営をしていたSuMiKaの萩原菫さんから吉田くんがガーランドづくりを請け負うお話をいただいて、みんなで内職をした時のことです。

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吉田くんはグループホームいずみののマネージャー。
認知症フレンドシップクラブ富士宮事務局や、認知症フレンドリージャパン・イニシアチブでも活躍しています。

「ハタは本当に必死になってやったわ。
終わってから、吉田さんと話したの。今度は次にやる内職探すのに、私が営業に行くわって。
でもそう言ってるうちになんだか忘れちゃっていて、毎日今度は木目込み細工(手芸)ばっかりやってたら、えらいたくさん作っちゃって。それを親戚にあげたりしていたの。親戚にもみんな行き渡って次は何をやろっかしら?と思って。
それで主任さんにラブレター書いたの。『私の人生はこれからどうやっていったらいいか?』って。そうしたら、主任さんから、私たちで何かやろうよって返事が返ってきたの。」

すごく深刻な内容のラブレターだったんですね。


きっかけは、できたらやってみようかな?

「冨田さんが毎日「ねこ」を着てるのを見て、冨田さんのおばあちゃんが作ったのを見せてもらったのよ。で、これだ!って思ったの。」

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冨田さんはホームのある泉野で生まれ育った地元っこ。地域の方とグループホームいずみのを繋いでくれる、笑顔の素敵な人です。そしてその冨田さんのおばあちゃんは、料理、漬物なんでも上手なおばあちゃんで、時折差し入れをいただくこともあります。

ミユキさんは、毎日日記をつけています。
そうすると、いろいろ忘れちゃってても日記が覚えてくれてるから便利だそうです。

日記を見ると、
 1/8 着物を解き始めた。
 2/17 ねこづくりに取り掛かる。今日は裁断です。
と書いてあります。

「冨田さんのおかげで、いろいろ教えてもらってできるようになったよ。
でも、ミシンの使い方とか、本当に苦労したよ。昔のものは簡単、最近のは何が何だかよくわからなかった。
最近は、1日3時間くらいかしらって思って始めるんだけど、気がつくと夕方までやっちゃうのよ。
夢の中でも、『ここの紐のところがおかしいな』ってもぞもぞしたり、トイレに座ってても作業してる時の手の感じがあるの。
夢中になるってこういうことね。
楽しいってないじゃん。いく枚できたって、楽しくて。」

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声を弾ませて、楽しそうに冨田さんと一緒に話をしています。
冨田さんと話していると、物置小屋の話になりました。

ミユキさんをはじめ、グループホームいずみののおじいちゃんおばあちゃんたちは、庭の畑で野菜作りをしています。
畑も少しずつ大きくなってきて、農機具もちょっとずつ増えてきました。
昨年からのみんなの気になってることは、農機具の置き場所。

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「雨ざらしじゃなくて、物置が欲しいって思うんだけど。高いでしょ。
だから内職して、足し前にしようって思って。
内職がてら、物置小屋が1つでもできると嬉しいなって。
毎日作ってると、内職して、小屋の1つや2つ建てるかって気持ちになる。」

後で冨田さんに聞いてみたら、ミユキさんは畑で収穫したものを使ってみんなで作る漬物の桶も置けるような小屋も欲しいそうです。
だから2つなんだ・・・


値段はどうやって決めるの?

「古い着物を解いて使ってるから、一つひとつ生地が違うのよ。縫っててもわかるよ。
だから、生地によって出来栄えも違うし、傷やシミがあるのもあるからね。
値段って言っても、私一人じゃ決められないね。」
ミユキさんは「私にはムリムリ」っていう感じで、話してくれます。

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「ねこ」の材料にしている古い着物は、いろんな人の思い出が詰まった、大切にしまってあったものを頂いたもの。
傷があったり、シミがあったり。
そういう一つひとつの傷やシミに、もしかすると素敵な物語があるのかもしれません。
私たちが毎日使っているものにある傷やシミと同じ。
あの時の傷、あの日のシミ。

大切にされてきた着物の生地を頂いて、それを使ってみんなで作っているのだからと、いくらって決めるときには、みんなで話して決めることにしたようです。


みんなで分担作業

「古い着物は、主任さんがもらってきたり、集めてくれるの。」
ミユキさんは、アイロンがけの前の解かれた着物の入った袋を見せてくれます。
「これ、1階の人達がみんなで解いてくれて、糸くずなんかを取ってくれて。」

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「そうやって解いたのを、次に私がアイロンかけて、日達さんが裁断してくれるの。」
日達さんは裁断を担当しているホームのスタッフ。
ミユキさんが夢中になって縫うのに間に合うように、一生懸命裁断してくれているそうです。

「で、それをミシンで縫うのが私のしごと。」
肩紐を縫った後、ひっくり返すのは1階の人達の仕事だそうです。
「そして最後の仕上げ、縫い上がったのに、綿を入れて閉じるのは、今は冨田さんがやってくれるの。本当に冨田さんのおかげ」


ホームのスタッフは、毎日おじいちゃんおばあちゃんと過ごす中で、いつもできそうなこと探しをしていて、「これ、どうやって解いたらいいのかな?」とおじいちゃんおばあちゃんが入ってきやすいように工夫したりして、しごとの分担をしたりしているそうです。


着物を解いている人たち

着物を解く作業をしていたおばあちゃんたち、時におしゃべりしながら、楽しそうにしごとをすすめていきます。
「あんまり見られて照れちゃうよ。」

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丁寧に手で縫われた着物を解くおばあちゃんたちも、それが縫われた時と同じような、丁寧な手つきで糸を切っていきます。

みんなでつくった「ねこ」を着て、ベランダに出て写真を撮りました。
「なんだか照れくさいね」
って言いながら。

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毎日、やりたくってしょうがないの。

ミユキさんのところに戻って、また話始めました。
「吉田さんとは、ダイエットのために毎日散歩するって約束したんだけど、気がつくとミシンの前に座ってる。」
吉田くんは、ミユキさんのケアプランをつくっているケアマネージャーでもあります。ケアプランの中で、運動としての散歩を提案してみたそうです。

でも、歩いてるより、やってる方が楽しい。
楽しくてときめいちゃったの。

小言言い言い、30枚。いろいろ小言言い通しやってるの。
私って、何かやりだしたら止まらない方なんだけど。
で、疲れたらキューピーゴールド飲むのよ(笑)」

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ミユキさんは話が終わると、お茶を飲みに行きましたが、またすぐに戻ってきてミシンの前に座っていました。


冨田さんのおばあちゃん

ミユキさんが作るきっかけになった「冨田さんのおばあちゃん」に話を聞きに行きました。
冨田さんのおばあちゃんが「ねこ」を作り始めたのは、娘さんがくれた一枚の「ねこ」がきっかけ。それを自分でもつくってみて、近所の人たちにあげたのが始まりだそうです。
「作業したりするときにもちょうどいいし、背中があったかいよ」

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近所の人がお茶を飲みにやってきました。
で、その方の背中にも「ねこ」
「これ、冨田さんからもらったのだよ。」


いずみのおばあちゃん縫製所、始まります。

私たちは、こんな風におじいちゃんおばあちゃんが「はりあい」で楽しくつくっている「ねこ」をいいねって思ってくれる人に着てほしいと思います。

昔懐かしい、あげて、貰って、お返しする。
積み重なり合う、物と気持ち。

どうやったら「ねこ」をあなたにお届けして、そういう循環が始められるのかなと考えて、つくった「ねこ」を販売してみようと考えました。

「ねこ」をあなたにお届けするのと交換に頂いたお金の使い道は、次の「はりあい」のための道具代だったり、材料費だったり、物置小屋を建てる足しだったり、おばあちゃんたちが決めます。
あなたの手元に「ねこ」が届いたら、着ている写真をおじいちゃんおばあちゃんに送ってください。
この人の元に届いたんだ、って嬉しくなると思います。
それが、次の「はりあい」に繋がります。


そんな「はりあい」の循環のための「ねこ」販売サイト
「いずみのおばあちゃん縫製所」
が始まります。

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たいせつなひとを、おもいだすとき
誰かの思い出の着物が、おばあちゃんの手しごとで、あなたの新しいものがたりの背中をあっためます。


「はりあい」の循環のための「ねこ」販売サイト

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2016/03/29

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